ルーシー「ここから先は、“構造”の勝負ですね。カバゾウ社長に話す前に、まずは私たちが整理しておきましょう」
クロサキ「今ある情報は、“点”なんですよね。限界利益率の高かったパターン、行動KPIの候補……バラバラのままだと説得力に欠けます」
クロタネ「要するに、“どういう行動が、どんな価値を生んで、それが利益につながったのか”。それを一本の流れにするってことか」
クログチ「論理じゃなくて構造で見せる。それが社長への説明のコツってことね」
ルーシー「ええ。今回は“戦略マップ”を使いましょう。バランスト・スコアカードの考え方をベースにした図解手法で、“誰に”“何を”“どう届けるか”の全体像をひと目で伝えられます」
ルーシー「そして、この“誰に・何を・どう届けるか”という整理は、私たちにとっての“ドメインの再定義”でもあるんです。つまり、“どこで戦うのか”と“何で勝つのか”を改めて言語化し直すフェーズに来た、ということですね」
※補足:ここで描こうとしている「戦略マップ」は、バランスト・スコアカード(BSC)における戦略可視化の代表的手法です。財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の視点をもとに、目標同士の因果関係を図解することで、組織全体の戦略ストーリーを共有可能にします。
クロサキを中心にして、KPI候補を視点に分けていく。
クロサキ「まず、利益につながった要因は“共創姿勢のある顧客”だった。その顧客が反応したのは、多品種少量・製造対応力」
クログチ「で、それをちゃんと届けるには、“初回提案のスピード”とか、“継続接触”が大事だった」
クロタネ「つまり、
・誰に(=共創志向の飛び込み来場者)
・何を(=うちの柔軟対応力)
・どう届けるか(=早く、続けて、価値を言語化して)
この3つが筋だったってわけだな」
ルーシー「そうです。それをBSCの戦略マップに落とし込むと、“顧客”の視点では共創志向層の獲得、“業務プロセス”ではスピーディな対応や柔軟提案が成果につながる構造になるはずです」
クロサキ「“接触の質”も重要ですね。決裁者と会えていたか、提案内容は新規性や差別化要素があったか……」
全員で議論をしながら書き込むことで戦略マップが精緻になっていく。
「……これ、すげぇな。“どうやって勝つか”の流れが一目でわかる」
クログチ「数字で語るだけじゃ伝わらない相手には、こうやって構造で見せるのが一番よ。社長の“納得スイッチ”は、感覚よりも“形”なのよ」
クロサキ「というか、これって社長向けだけじゃなく、私たち営業部にとっても“戦う地図”になりますよね」
ルーシー「その通り。そして、ここで描いた戦略マップをもとに、次は具体的なKPIをバランスト・スコアカードの形式で整理しましょう。つまり、“構造の理解”から“行動の管理”へと進むわけです」
クロタネ「よし……この“勝ち筋の地図”、社長にぶつけてみようぜ」
「心理的ケアも含めた説明会資料」――新しい戦略が、現場に受け入れられるとは限らない。“行動の変化”を促すため、クロタネたちは説明の仕方にも工夫を凝らす!
戦略を伝えるとき、相手の“情報処理のクセ”に合わせることは極めて重要です。カバゾウ社長のように、構造で納得するタイプには“戦略マップ”が有効です。
ここで用いる戦略マップは、バランスト・スコアカード(BSC)の構造をもとにした戦略可視化ツールです。営業戦略の因果構造を示すことで、行動と成果のつながりを明確にし、次のステップとしてKPI設定にもスムーズに接続できます。
また、“誰に・何を・どう届けるか”の整理は、いわば企業の“ドメイン”の再定義にあたります。分析結果に基づき、従来の思い込みを捨てて“戦場と武器”を見直すことが、利益体質への第一歩です。
権守一城
中小企業診断士:経済産業大臣登録番号427888
中小企業の現場出身の中小企業診断士。
事業・経営・ITの3本足を持つヤタガラス人材チームを中小企業で創る支援を大切にしています。