順調に限界利益率が伸び、全体で見たときの粗利額は増えてきた。
そんななか、クロタネは気になることが出てきた。
クロタネ「最近さ、“中堅×継続提案”で思ったほど粗利が出ない案件、増えてないか?」
クログチ「うん、数字見ててもそう。以前なら鉄板だったのに、単価が落ちてるし、競合も増えてきた感じ」
クロサキ「僕のダッシュボードでも、モデルのKPIを満たしてても粗利が出てない案件、じわじわ増えてます。予測とズレてる」
クロタネ「……モデル、ちょっと古くなってきたってことか」
ルーシー「その可能性はありますね。“当たる理由”は、常に環境とともに変わっていきますから」
(ホワイトボードに現モデルを書き出す)
ルーシー「現行の“中堅×継続提案”モデル、中心のKPIはこの3つです。『訪問頻度』『提案カテゴリ数』『相手の役職ランク』ですね」
クロタネ「この組み合わせで、一時期はかなり安定して粗利取れてた」
クロサキ「でも、最近のズレ事例を見てると、訪問頻度が高くても受注に繋がらないとか、提案しても『検討します』で終わるケースが多い」
クログチ「現場のヒアリングでも、“比較されやすくなってきた”“他社も同じような提案してる”って声があったわ」
ルーシー「つまり、『同じ行動』をしても、『差別化されない』状況が生まれているということですね」
クロタネ「どうすりゃいい? また重回帰でやり直すのか?」
ルーシー「もちろん数字も大事ですが、まずは“仮説”を立てましょう。今の市場環境で、何が“買う理由”になっているのかを考える必要があります」
クロサキ「……前に拾った“単発イベント型”の成功パターン、あれって『即納』『独自性』が刺さってた」
クログチ「“企画性”が高い提案、ってことね。カスタマイズ性とか、スピードとか」
クロタネ「それ、今のモデルに入ってないな……よし、仮説立てよう。“企画提案×即納対応”が新たな勝ち筋かも」
ルーシー「はい。その仮説をもとに、“ズレてきた現モデル”の外に新たな条件を探しに行きましょう。そして、再度数字で検証していきましょう」
「モデルから外れる顧客」――戦略マップに乗らなかった先に、新たな“勝ち筋”がある!?
略モデルは一度作ったら終わりではなく、継続的にメンテナンスすべき“思考の地図”です。
モデルの陳腐化は、次のような兆候から見えてきます:
・KPIを満たしても成果が出ない案件の増加
・現場からの違和感の声(“以前と様子が違う”)
・競合環境や顧客ニーズの変化
こうした“ズレ”は、モデルの死ではなく、進化の入り口です。
定期的に仮説と検証を繰り返すことで、利益体質は保たれていきます。
逆に一番の問題は一度成功した必勝法にしがみつき、モデルを変えられないことです。
中小企業は社長が営業をし、その経験を成功モデルとしている例が多くあります。
もちろん経験と勘は重要です。しかし、数値でも見ることでモデルが変わっていったことを認めることに繋がることもあります。
権守一城
中小企業診断士:経済産業大臣登録番号427888
中小企業の現場出身の中小企業診断士。
事業・経営・ITの3本足を持つヤタガラス人材チームを中小企業で創る支援を大切にしています。