クロタネ「……よし。これが、うちの“勝ち筋の地図”だ」
クロサキ「構造で語るって、こういうことだったんですね」
クログチ「さて、これをどうやって現場に落とし込むか、よね」
ルーシー「まずは、カバゾウ社長に見てもらいましょう。この戦略マップを中心に説明資料を整えてみてください。」
クロサキ「ルーシーさん書いてくれないの?」
ルーシー「人が書いた資料じゃ伝わらないですよ。まずは3人で書いてみてください。アドバイスはします。」
クロサキ達は3人で資料を書いた。細かい説明よりも戦略マップを中心にどのようなつながりで利益を作っていくのか。今までは何がいけなかったのかを書いていった。
クロサキは自分の手で書くことで"これを自分がやるんだ"ということへの強い気持ちと"本当にできるのか"という不安が両方押し寄せてきた。
そして、3匹の黒いカラスと1匹の白いカラスはカバゾウのいる社長室へと向かっていった。
クロサキ「今回の説明資料は、“誰に・何を・どう届けるか”から考え直し、どうやって利益増加に繋げいくかの構造を、因果関係で整理しています。これまでの売上至上主義から、価値起点の営業スタイルへ――その道筋を示したものです」
カバゾウ「ふむふむ……なるほどな。ようできとる。けどよォ……」
クロサキ「え?」
思わぬ反応にクロサキは思わず情けない声を出してしまった。
カバゾウ「……え?って、お前……」
カバゾウ社長はじっとクロサキを見て、ひと呼吸を置いてから、大きな口を開いた。
カバゾウ「だってお前が一番、“売上だ!”“行動量だ!”“大手を狙え!”って、声張り上げてたろうが。方針が変わるのは構わんがな。旗振ってたのはお前だぞ。部下のカラスが"どっち向けばいいんだってならんか。イカルとかお前が手をかけて大手への大量単品営業を進めていたやつは下手したら退職しかねないぞ。」
社長室に沈黙が流れる。クロサキは不安そうな顔でクロタネを見つめた。
それに応えるように、クロタネは黒い目を開いてこう言った。
クロタネ「……それは、俺も思ってます。だから、ちゃんと伝えたいんです」
「“変わるぞ”じゃなくて、“今までの中にも、光があった”っていう形で」
「現場が、自分たちの仕事を肯定できるように。次に進めるように……」
クログチ「そのための“伝え方”がいるのよね。論理じゃなくて、気持ちに届くやつ」
ルーシー「そうです。資料を“納得と安心の設計図”に変えましょう。現場が“否定された”と感じると、変化は拒絶されます。でも、“すでに始まっていた変化を整理する”という位置づけなら、前向きに受け取られます」
ルーシー「たとえば――」
・なぜこの変化が“自分たちの未来”に必要なのか、ストーリーで伝える
・“自分たちがすでに一歩踏み出していた”ことを示す(=成功事例の引用)
・“できていること”を認めつつ、“あと少し”を提案するトーンにする
・よくある不安に先回りして答えるQ&Aページを用意する
カバゾウ「おお、ええやん。そんなんがあれば、“やらされ感”が減るわな」
クロタネ「“作戦”ってより、“対話”に近いな」
クログチ「うちの営業が“自分ごと”として受け止められるか、そこがカギね」
ルーシー「そう。だから次回は、この“心理ケア込みの説明会資料”を、みなさんで一緒に仕上げましょう」
「説明会、始まる」――全社への方針共有の場。果たして、戦略は“伝わる”のか?そして、現場の反応は――!?
いくら戦略が正しくても、“人の心”が納得しなければ、行動は変わりません。特に組織変革の初期では、「正しさ」より「伝わり方」が重要です。
現場メンバーが感じやすい心理的ハードルに、資料の中で先回りして対応すること。それが“心理的ケアを含めた説明”のポイントです。
・「この方向性は、自分たちの努力とつながっている」
・「無理な改革ではなく、続けられる改善なんだ」
・「ちゃんと見てもらっている・理解してもらっている」
こうした“安心”の要素を丁寧に設計することで、変化ははじめて前向きに受け入れられます。
権守一城
中小企業診断士:経済産業大臣登録番号427888
中小企業の現場出身の中小企業診断士。
事業・経営・ITの3本足を持つヤタガラス人材チームを中小企業で創る支援を大切にしています。