ルーシー:
社長、先日の終活フェア、テレビに映ってましたよ。あの「宇宙葬対応の棺」、SNSでも話題でしたね。
社長:
おお、見た? すごい反響だったよ。「中に入ってみたい」って(笑)
ルーシー:
まさに“体験で惹きつける”、これは見事なプル戦略ですね。
社長:
でも一方で、うちの営業は今日も葬儀社に足で売り込んでる。なんか方向バラバラでね。
ルーシー:
いえ、それが戦略として“あり”なんです。いわゆる「プッシュ」と「プル」の組み合わせ、ハイブリッド戦略と呼ばれるものです。
社長:
あー、そうか。営業はプッシュ、終活イベントはプルってことか。
ルーシー:
はい。たとえば葬儀社向けに「棺の展示用キット」「販売インセンティブ」「葬儀ディレクター向けのトークマニュアル」などを提供して、導入を促す──これは立派なプッシュ戦略。
社長:
実は最近、成約で1本2,000円の販売報奨金つけてみたんだ。反応は上々。
ルーシー:
素晴らしい。ただし注意点としては、インセンティブに頼りすぎると“価格でしか選ばれない”危険性もあります。チャネルスタッフィング──つまり“葬儀社に在庫だけ積まれる”なんてことも。営業担当が売り込んでせっかく葬儀社に納めても、最終的には需要者に届かないと流通していきません。
ルーシー:
そこで活きるのが、終活イベントでの“納棺体験”です。実際に体験して「私、この棺がいい」と思った方が、家族に伝える。これが数年後、葬儀の現場での指名につながる。
社長:
そうなんだよ。「テレビで見た棺、使いたいって言われた」って葬儀社から連絡きたこともある。
ルーシー:
もうその時点で、消費者が“商品をプルしてる”状態です。プル戦略の真髄ですね。特に当社のように独創的な製品を作っている場合は、「棺は自分で選ぶものだ」という文化形成が重要です。
社長:
でも両方やるのって正直しんどいよ。営業コストも、イベント出展費もバカにならんし。
ルーシー:
おっしゃる通り。だから重要なのは「連携」と「一貫性」です。
たとえば、終活イベントで得た声を、営業資料やトークスクリプトに活かす。あるいは、SNSで反応がよかった棺を中心に葬儀社への売り込みを行う。情報を“片方で終わらせない”んです。
社長:
あー、なるほど。プルで手ごたえがあったネタを、プッシュの武器にするってことか。
ルーシー:
御社のように製品に強いストーリー性がある場合、プル戦略で“ブランド”を育てていくのが中長期的な鍵です。ですが現場では、プッシュで導入のハードルを下げる工夫も必要。両方を設計していくことが理想です。
社長:
よし、じゃあ戦略をちゃんと組み直してみるよ。
イベントも出るだけじゃなく、ちゃんと“売上につなげる”設計をしていかないとな。
ルーシー:
はい。社長の「世界に一つだけの棺」、ちゃんと世の中に届くよう、仕組みを整えていきましょう。