社長:なあルーシー、最近うちの若手が「PLとかBSって要は帳簿っしょ?」とか言っててさ。うーん、何か引っかかるんだよな。
ルーシー:帳簿、という表現も間違いではありませんが、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)は“ただの帳簿”とは少し違いますよ。むしろ、企業の健康診断書と言っていいかと。
社長:健康診断書?
ルーシー:はい。PLは“過去一定期間の成績表”、BSは“ある時点での持ち物と借金の一覧”です。前者が「この1年でどれだけ稼いだか」、後者が「今どれだけ資産を持っていて、どれだけ借金があるか」を示します。
社長:なるほど。でもそのPLって、何を見ればいいのかよく分からんのよな。
ルーシー:では順を追ってご説明しますね。PLは段階的に5つの利益を計算します。売上高から売上原価を引いた「売上総利益(粗利)」、そこから販管費を引いた「営業利益」、さらに営業外収益・費用を加減して「経常利益」、そこに特別損益を加えて「税引前当期純利益」、そして法人税を引いて最終的な「当期純利益」です。
社長:5段階もあるのか!でも、それ全部いるのか?
ルーシー:はい。たとえば経常利益を見ると、利息などの金融費用を含めた“本業+財務活動”の実力がわかりますし、営業利益だけでは“販管費の重さ”に気づけます。分けて見ないと、改善の打ち手がボヤけるんです。
社長:なるほど…って、うちも販管費、じわっと増えてる気がするな。
ルーシー:ですね。逆に売上総利益が落ちていたら、製造原価や単価の見直しが必要です。これらを比べることで、どこで利益が漏れているのかを“分解”できます。
社長:じゃあBSは?こっちはもっと謎だ。
ルーシー:BSは「資産」「負債」「純資産」の3部構成です。資産=持ち物、負債=借金、純資産=持ち物−借金の“残り”。この純資産がいわばあなたの“企業の体力”です。
社長:借金が多すぎるとヤバいのか。
ルーシー:はい。特に流動比率、つまり「1年以内に現金化できる資産 ÷ 1年以内に払わないといけない借金」が重要です。目安は100%以上。これを切ると“黒字倒産”リスクが増します。
社長:黒字倒産ってやつか…売上はあっても資金ショートするってやつね。
ルーシー:その通りです。そしてここで重要なのが“費用と資産の区別”。例えば10万円の工具を買ったとします。それが毎年使うような設備なら資産。すぐ消耗するなら費用です。
社長:それ、うちでも揉めたわ。経理が「備品だ」って言うけど、現場は「消耗品だろ」って。
ルーシー:経理あるあるですね(笑)。税務的にも会計的にも、“何年使うのか”がカギになります。原則は10万円以上なら資産。ただし少額減価償却資産の特例などもあるので、税理士さんとの連携が重要です。
社長:ああ、あと売上と収益って違うの?
ルーシー:違います。売上は本業の成果、収益はそれ以外も含む広い概念です。たとえば補助金収入や資産売却益も“収益”ですが“売上”ではありません。
社長:ふむ。じゃあ設備売ったら売上にはならないってことか。
ルーシー:その通り。それは特別利益になります。
社長:でもまあ、分類って言っても結局どう役立つの?
ルーシー:たとえば製造業なら、製造原価と在庫の関係をきちんと区別していないと、利益がブレます。売ってない在庫はBS上の資産、売ったものだけがPLに乗る。これ、間違えると“過小利益”になってしまうことも。
社長:そう言われると、在庫が多いのに赤字ってのも変な話だな。
ルーシー:そうなんです。だから「PLだけ見て判断する」のは危険。BSとセットで見ることで“本当の利益構造”がわかります。
社長:うーん、でも時間かかるんだよな、これら見るの。
ルーシー:大丈夫。慣れれば5分です(笑)。あと金融機関はこのBSとPLの“整合性”を見ています。利益が出てるのに純資産が増えていない?どこかにズレがあるのでは?と。
社長:なるほどな…。逆に正しく作れてると信用になるのか。
ルーシー:はい。融資審査、補助金申請、取引先の評価…あらゆる局面で信頼の土台になります。たとえばA社では、間違えて1,000万円の設備を費用にして赤字転落しかけました。でも資産にして減価償却すれば利益も正常化。結果、金融機関との関係も改善されました。
社長:わかったよ。結局、分類をなめちゃダメってことだな。
ルーシー:はい。分類は経理の仕事じゃありません。社長の“経営判断の武器”です。
社長:よし、次の会議、PLとBS両方持ってきてもらおう。俺が質問する側になるぞ!
ルーシー:素晴らしい決意です、社長!その背中、推させていただきます!