ルーシー:
社長、最近、自社の強みって何だと思いますか?
社長:
なんだ急に(笑)いやぁ…そりゃ品質とスピードかな。でも他社も似たようなもんだし、うちだけの強みって言われると…うーん。
ルーシー:
ですね、よくあるお悩みです。そこで今日は、「バリューチェーン分析」って話を持ってきました。マイケル・ポーターって名前、聞いたことあります?
社長:
名前だけなら…。あの有名なコンサルの人でしょ?理論は難しそうだけど、ウチに関係あるの?
ルーシー:
めちゃくちゃあります。バリューチェーンっていうのは、会社のすべての活動を「価値を生む流れ」として分析して、「どこが強みで、どこが足を引っ張ってるか」を可視化するフレームワークなんです。
社長:
可視化って…図にするとか?
ルーシー:
はい、例えば「調達・製造・出荷・販売・サービス」っていう主要な流れと、「人事・技術開発・調達・管理」などの支援活動が、どう連鎖して利益を生んでるかを整理するんです。
サプライチェーンと混同されやすいですが、バリューチェーンは「自社の中」でどう価値を生むかにフォーカスしてる点が違います。
社長:
うちでいうと、製造が主力だけど…他の活動も評価対象になるわけか。
ルーシー:
そうです。たとえば、優秀な営業がいても、工場の在庫管理がザルなら納期で信頼を失う。逆に、製造は普通でも、マーケティングが尖ってればファンが付く。どこで「価値」が生まれて、どこで「無駄」が出てるかを診断できるのが、バリューチェーンの強みなんです。
社長:
なるほどねぇ。診断って…どうやるんだい?
ルーシー:
まずは、自社の活動を「バラす」ところからです。
「どんな工程があるか」「その工程にいくらコストかかってるか」「お客さんが喜ぶのはどこか」っていうのを整理します。そこから、「コストが高いだけの工程」と「お客が価値を感じてくれてる工程」を見極めていきます。
社長:
ふむ…。ウチだと製造はコスト高いけど、お客はそこを評価してるかどうか…。
ルーシー:
まさに、そこを考えるのがバリューチェーン分析の要点です。そして、強みに投資して、弱みは改善か外部委託する。この判断の軸になります。
さらに、「VRIO分析」っていうフレームを使えば、「うちの強みは真似されにくいのか?」「活用する組織体制は整ってるか?」まで踏み込めますよ。
社長:
おお、それなら差別化とかコスト削減にもつながりそうだな。
ルーシー:
はい。たとえば、ニトリは企画から販売までを全部自社でやってコストを抑えてるし、伊藤園は茶葉の栽培から関わって品質で差別化してます。
一方、岐阜の豆腐屋さんを承継してEC展開した食品会社のように、「バリューチェーンの川上や川下に手を出す」ことで、新しい価値を作る例もあります。
社長:
ウチでもそんなことできるかな…。
ルーシー:
できます。例えば、段ボール製造から梱包・配送までをワンストップで受ける会社は、もともと段ボール「だけ」だったところから広げて成功しています。
大事なのは、「全部やること」じゃなく、「自社がどこで価値を生んでいるか」を見極めること。
それが分かれば、限られた資源でも勝負できます。
社長:
…なるほどな。そういう風に見ると、自社のクセというか“強みの芽”が見えてくる気がする。
ルーシー:
ええ。しかも、今はESGやデジタル化の影響で、「どこでCO₂が出てるか」とか「どこをAI化できるか」も分析の対象になります。
バリューチェーン分析って、もう“昔の理論”じゃないんですよ。むしろ、今こそ再注目すべきです。
社長:
理屈はよく分かった。でもウチみたいな小さな会社じゃ、そんなに複雑な分析できないぞ。
ルーシー:
それもよく言われます。でも、完璧な分析より「シンプルでも本質をつかむこと」が中小企業では重要です。
分析のスコープを絞って、社内会議でざっくり話すだけでも効果がありますし、私みたいな診断士を使うのもアリですよ(笑)
社長:
よし、まずは製造と営業、それに人材育成のところを洗ってみようか。今あるリソースで、どこを活かせば一番伸びるか考えてみる。
ルーシー:
素晴らしいです、社長。それがまさにバリューチェーンの第一歩。「今の業務の何が価値を生んでいるのか」を可視化すれば、戦略も現場も、もっと筋肉質になりますよ。
出典
経済産業省-中小企業庁-ミラサポPlus-事例から学ぶ!「新事業展開」