ルーシー:社長、最近、財務指標って意識されてます?
社長:うーん、売上と利益は見てるけど…細かい指標まではなあ。何か問題あるのかい?
ルーシー:いえ、実は“自己資本比率”って、今かなり注目されてるんです。信用金庫さんなんかもセミナー開くくらい。
社長:ああ、それ聞いたことあるな。…で、それって何%あればいいんだっけ?
ルーシー:いい質問です。自己資本比率は「純資産 ÷ 総資産 × 100」で求める指標でして、ざっくり30%以上あれば安定的と見なされます。50%で優良、70%なら超優良。
社長:へえ…じゃあ、ウチは…えーと、去年の決算書…純資産が1,500万、総資産が4,000万だから…
ルーシー:自己資本比率は37.5%ですね。悪くない数値です。でも安心は禁物です。
社長:えっ、悪くないのにダメなの?
ルーシー:いえ、良いんです。でもこの比率は“静止画”みたいなもので、過去からの推移や資金繰りとセットで見ないと危ないんですよ。
社長:なるほどな…でも、これが高いと何が良いの?
ルーシー:一番は“潰れにくい”ことです。借金が少なくて自己資本が厚いと、急な赤字でも耐えられる。金融機関からの見え方もまったく変わります。
社長:ほう…信用金庫とか、やっぱ見てるのか?
ルーシー:ええ、プロパー融資の審査では特に。30%切ると「自己資本薄いな」と思われ、10%だと「保証協会付きでもキツイですね」となりがちです。
社長:やっぱ銀行って、数字の細かいとこ見てんだな。
ルーシー:はい、自己資本比率は“体力”、手元現金は“瞬発力”というイメージです。どっちもなければ戦えません。
社長:でた、スポーツたとえ(笑)
ルーシー:たまには使いますよ(笑)。あと、注意点もあります。比率が高すぎても「成長意欲がない」と思われる場合があるんです。
社長:えっ、良すぎてもダメなのか?
ルーシー:はい。たとえば70%超えなのに借入ゼロ、現金余らせてるだけ、設備投資もしてない…となると「守りすぎじゃないか」と見られることも。
社長:じゃあ結局、何%くらいがいいの?
ルーシー:業種や規模にもよりますが、「30〜50%くらいで推移していて、かつ改善傾向がある」のが理想です。
社長:ふむふむ。ちなみにウチがこれ改善したいと思ったら、何からすれば?
ルーシー:基本は利益の蓄積ですね。黒字を出して内部留保を増やす。それが一番王道です。
社長:…が、黒字が簡単に出せたら苦労しねぇんだよ!(笑)
ルーシー:はい、ツッコミ想定済みです(笑)。なので、他には不要資産の整理とか、増資も手段としてあります。
社長:増資って、株を誰かに買ってもらうやつ?
ルーシー:そうです。でも中小企業だと、結局社長が出すことも多いです。デット・エクイティ・スワップって方法もあります。
社長:なんか強そうな名前だな…
ルーシー:借入金を資本金に振り替える方法です。これなら返済義務がなくなり、比率も上がります。ルーシー:略して「DES」って言うんですけど、ざっくり言うと借金を資本金に振り替える方法です。たとえば、社長が会社に1,000万円貸してるとしますよね?
社長:うん、あるある。
ルーシー:それを「借金じゃなくて出資にする」と宣言して、資本金に組み入れると、その1,000万円は負債から自己資本に切り替わる。
帳簿上、借金が減って自己資本比率が上がるんです。
社長:おお…なんか帳簿マジックみたいな(笑)
ルーシー:見た目は確かに変わりますが、実質的には返さなくていいお金に変えるってことなので、金融機関からの評価も上がりやすくなりますよ。
ただし、税務署にはちゃんと登記や手続きが必要なので、顧問税理士さんと相談のうえでね。
社長:なるほど。でもまあ、まずは“利益残す”ってことか。
ルーシー:はい。そして在庫や売掛金を減らして総資産を圧縮するのも有効です。
社長:でも、資産減らすって不安にもなるな…
ルーシー:そこは“余計な資産だけ”を減らす工夫です。不良在庫、使ってない土地建物、売上にならない投資とかですね。
社長:おぉ…結構やること多いのね。
ルーシー:でも、やる価値あります。自己資本比率が改善すれば、いざという時の金融機関の対応が違いますし、社内にも安心感が出ます。
社長:そういやウチの社員も、設備投資に「大丈夫ですか?」って聞いてくるわ。
ルーシー:ですよね。社長の“攻めの投資”も、財務の裏付けがあるからこそ説得力が増します。
社長:よし、まずはウチの比率の推移、ここ5年分出してみるか。
ルーシー:素晴らしい第一歩です! あとで、同業他社との比較データも一緒に持ってきますね。
社長:頼りになるね、ルーシー。
ルーシー:恐縮です。でも、数字が社長を助けてくれる場面はたくさんありますから。味方につけて損はありませんよ。