資金繰り表って、面倒だけど命綱なんですよ社長。
社長:
ルーシー、資金繰り表って…正直、面倒なんだよね。毎月現金の動き全部まとめるなんて無理だよ。
ルーシー:
社長、面倒って言葉、聞き慣れてきましたね(笑)。でも、その「面倒くさい」を放っておくと、黒字倒産になりますよ。
社長:
利益出てるのに倒産?それって都市伝説じゃないの?
ルーシー:
いえ、割と現実的な話です。損益計算書上の黒字と、現金の手持ちは全く別物です。仕入れ払った後に売上の入金が3ヶ月後、なんてことも多いですよね?
社長:
ああ、それは確かにある。月末は常に冷や冷やしてるよ。
ルーシー:
その冷や冷やを“見える化”するのが資金繰り表です。来月のどの週に、いくら足りるかが具体的に分かる。それがわかれば、先手が打てます。
資金繰り表って、何をどう書くの?
社長:
で、結局何を書けばいいの?
ルーシー:
基本はこうです。
① 前月の現金残高
② 今月の入金(売掛金回収・現金売上など)
③ 今月の出金(仕入・給与・借入返済など)
④ 差引残高(=今月末時点の手元資金)
それを月単位で3〜6ヶ月先まで予測していきます。
社長:
ざっくりとは分かるけど、じゃあ何に使うのさ?予測してどうするの。
ルーシー:
例えばこうです。「来月の25日に給与と仕入で500万円の支払いがある。でも、20日時点での入金は400万円」——この時点で100万円の資金ショートが確定ですよね。
この数字を2週間前に知っていれば、どう動きます?
社長:
銀行に融資相談するか、仕入先に支払日交渉かな…
ルーシー:
そう、その“選択肢”があるのが資金繰り表の力なんです。ギリギリまで放っておくと「お願い!何とか今日中に…!」って、弱い立場になるでしょう?
数字じゃなくて、“戦略”になるんです
社長:
なるほどね…でもさ、ウチみたいな中小企業、融資も厳しいし、いまさらって感じもあるよ。
ルーシー:
だからこそ、資金繰り管理が「戦略」になるんです。
売上が増えても、回収サイトが長ければ現金は増えません。逆に仕入の支払サイトが短ければ、黒字でも現金は残らない。
社長:
……それって、今のウチじゃん。
ルーシー:
(笑)その現実を、**「見える化して、改善する」**のが資金繰り表の真の役割です。
それに、資金繰り表を出せる企業は、銀行からの信頼が段違い。融資交渉でも「じゃあ、今後3ヶ月の資金繰りを見せてください」と言われます。
落とし穴と注意点──“黒字倒産”の構造
社長:
でもさ、実際に黒字倒産ってどうして起きるの?
ルーシー:
一番多いのは「売掛金が多すぎる」。売上はある、利益もある。でも現金化は2ヶ月後。その間に支払が集中して、現金が足りない。
もう一つは「在庫」。モノはたくさんある。でも売れない、だから現金化できない。資産はあるのに倒産する、よくあるパターンです。
社長:
怖っ……でもちょっと分かってきた。数字だけじゃなくて“流れ”を見るってことだね。
まずは“完璧じゃなくていい”、始めよう
ルーシー:
社長、最初から完璧を目指す必要はありません。
Excelのテンプレートでもいい、科目はざっくりでもいい、**大事なのは「続けること」**です。
社長:
でも、月末は忙しいしなぁ…
ルーシー:
逆に言えば、「月末が忙しい理由」を資金繰り表で見つけることもできますよ?
支払が集中してないか?手形の決済日が固まってないか? それに気づくだけで改善のヒントになります。
社長が資金繰り表を“使う側”になるとき
社長:
ルーシー、ウチみたいな小さい会社でも、本当に意味ある?
ルーシー:
むしろ、小さい会社ほど資金の“流れ”が命。
売上よりも、いま手元にある現金の方がリアルな経営判断の材料になります。
社長:
……わかった。テンプレート、どっかにある?
ルーシー:
はい、日本政策金融公庫とか中小企業庁のサイトで無料配布されています。必要なら私が導入支援もやりますよ。
社長:
……じゃあ、ちょっとやってみようかな。倒産なんて、シャレにならないからな。
ルーシー:
その一歩が、経営の安定につながります。
未来のキャッシュが見える経営、始めましょう。
資金繰り表の見本を解説をつけておきました。そこまで難しくないですよ。
前月繰越:前月末時点で手元にあった現金や預金残高です。これが今月のスタート地点になります。
収入:現金売上・売掛金回収・手形期日落ちなど、月内に入ってくる「現金の入金予定」を記載します。事業活動によるもの以外にも、補助金や一時的な入金などもここに入ります。
支出:仕入支払い・給与・経費などの「出ていく現金」。借入返済の「元本」はここには含めず、下の“財務収支”に記載することが多いです。
差引過不足:収入合計 − 支出合計。ここがマイナスになっていると「資金ショート」の兆候です。
財務収支:借入や返済といった財務活動によるキャッシュの出入りを記載します。金融機関との取引がある企業は、ここが非常に重要になります。
翌月繰越:前月繰越+差引過不足+財務収支の合計が、翌月のスタート資金になります。これが**プラスであるか?どれだけ余裕があるか?**が、会社の資金体力を示す指標になります。